んにゃ。兄姫(えひめ)にゃ。
この頃はすっかり「めめたん」と呼ばれなれてしまったの。あたちの名前はどうなってしまうのでしょう…。
なんて、ホントは全然悩んでないのよね。
ご主人のあたちへの愛情は揺るぎないし、不変だもの。
だからあたちは呼び方が多少変わろうが、かまわにゃいの。
それより問題はお母さんにゃのよね。
あの人、また入院するの。
入院中はご主人、面会時間中めいっぱいあの人に付きっきりだから、あたちたち猫族はずうっとお留守番。
お父さんの帰りも遅いから、あたちたち、真っ暗なお部屋の中でじっと待っているのよ。
今回はカテーテルとやらだけで、二泊三日の予定だって言うから、まだ我慢してやれるけど。
ほんと、あの人は厄介にゃ!
あたちからご主人を取っちゃう。
でもね、お母さんがいないとおやつがもらえないし、寂しい時に構ってくれる人がいない、という難点もあるんにゃ。
そうか。一番いいのはお母さんにいつも元気でいてもらって、入院なんかしない体になってもらうことにゃんだ!
でもそれは今現在無理な話にゃし。
う~ん、そうにゃんなのよね。
お母さんは病気のデパートみたいなひとにゃの。
こうなったら逆に早く死んでもらった方がいいのかしらん…。
不吉なことをふと、しかし真剣に考えてしまうあたちなのでした。にゃんにゃん。
姫猫日記18
にゃ。兄姫(えひめ)にゃ。
あたち、ご主人から「ひめひめ」とか「ひめたん」とか呼ばれることが多かったんにゃ。
お母さんもそれに便乗して「ひめたん」とか「ひめたんたん」てか呼んでいたんにゃよ。
にゃけどこの頃、変わってきたの。
気がついたらご主人ったら「ひめめ」って呼んでるの。
そしてまた気がついたら「ひめめ」の「ひ」が取れて「めめ」になっていたの。
にゃ。どーしてどんどん短くなるの?
あたちとしては「めめ」でも「めめたん」でも可愛いから良いんだけど、ご主人の思考回路が理解できにゃい…。
人間って言葉を短縮したがる生き物なのかにゃあ。
お母さんが言うには、若い人は特にそうだって。
ニュースだって「あんぽ」「あんぽ」って何か美味しい干し柿のことかと思っていたら、「安全保障」の省略だったし。
うちのご主人はまだマシな方だ、ってお母さんは真面目な顔。
世の中全部がこのところ省略に走っている、って感じているんだって。
「気色悪い」がいつの間にか「キショい」になってたり。
世の日本語はどうなっていくのかしらね。
あたちの呼び名は今後どう変わっていくのかにゃ。
ちょっと不安感と興味とが混じり合った変な気分のあたちなのです…。
姫猫日記17
みゃあ。兄姫(えひめ)にゃ。
聞いて。あのね、朔にゃあったらトイレの窓から家出して、また知らんぷりしておうちに戻っていたのが、現行犯で捕まったんにゃよ。
お隣の塀から電気のメーターを飛び石代わりにして、ぴょんぴょんと窓に飛び移っていたんにゃ。
帰り道に窓から顔を出したところを、お父さんにふんずかまって、それからが大変。
お父さんには頭を小突かれ、お母さんにはたっぷりと嫌みを言われ、ご主人からは見捨てられた。
にゃんて、一時的に「もう、うちの猫、止めたんでしょ。」と冷たい扱いを受けただけにゃんだけどね。
ご主人、決して猫を見捨てたりしにゃいもん。
でも、やっぱりこっそりと家出していた朔にゃあが悪いよね。
恐がりで、玄関からは下の段々までしか降りられなくて、すぐおうちに後ずさりしていた姿からは、覗き見はしても家出しているとは想像もしていなかったってご主人も苦笑していたよ。
おかげで、急遽トイレの窓につっかい棒がはまり、ちょっとしか開かないようにされちゃった。
あれじゃあもうお外も満足に覗けにゃい…。
そりゃあ、本猫の朔にゃあはいいよ。自業自得にゃもん。
でも、あたちも迷惑を被るのは遠慮したいにゃ。
にゃから今だに朔にゃあがご主人に「不良。放蕩息子。」と呼ばれてつんつんされても仕様がないと思うの。
おうちのルールを守れなくて、みんなを心配させた朔にゃあが悪い。
あたちが庇ってやるまでもないと思った所で当たり前だと誰でも同意してくれるんにゃないかにゃあ。
にゃんにゃん。
姫猫日記16
にゃ。兄姫(えひめ)にゃ。
あたち今、ねずを穫れなくなっているの。
あたち、毎日ご主人のためにねず見張りをしているの。
それで、猫玩具ぐらいのねずをハンティングして、ご主人にプレゼントしていたの。
あたちにとって、ねずとはあのサイズの玩具のこと。猫パンチ一発で仕留められる程度のものにゃったの。
でもね、でも、出会っちゃったの、あたち。そう、親分ねずに。
そいつは尻尾を入れると十分にあたちの半分はありそうなでっかいやつで、あたち、そいつを見るなり固まっちゃったの。あまりの迫力と醸し出す凄みに、縮みあがっちゃったの。
信じられなかったの。あんなでっかいねずが存在するにゃんて。
あたち、本当はすごくデリケートにできているにゃ。
ある意味、世の中がひっくり返るようなショックを受けたのにゃ。
あたち、ねずと言うものを舐めていたにゃ。
あの、親分ねずと対面した十数秒が、完全にトラウマになってしまったにゃ。
あたち、このままもうねずを穫れなくなってしまうのか知らん…。
そうなると、ご主人を守ることができない…。
にゃ~!お守り猫でいられにゃい。
そ、それだけはイヤにゃ!
でも、親分ねずは怖いよ~。
にゃ。そうにゃ。会わなけりゃあ良いんにゃ。
あたち、知らんぷりすることにしたにゃ。
チビねずは将来ハンティングするかもしれないけど、親分ねずは見て見ぬ振りをする。
にゃ。これで全部解決にゃ。
めでたし、めでたし。ってほんとに良いのかあ?!
良心が痛いような気がする…。
姫猫日記15
にゃおん。兄姫(えひめ)にゃ。
春らしい日が続いているにゃね。
ご主人が玄関を開けると沈丁花や梅の花の匂いが漂ってくるにゃあよ。思わずお鼻をひくひくさせちゃう。
お隣のお庭で咲いているんにゃって。
あたちはお外が怖くて出られないから、どんなお花が咲いているか見ることはできないんにゃけど、いい匂いは大好きにゃ。
朔にゃあは相変わらずトイレの窓に乗っかってお外の様子を見るのに夢中なんにゃよ。
この間なんか、夜仕事から朝帰ってきたお父さんに窓から身を乗り出しているところを見つかって、現行犯ということで思いっきり怒られたばかりにゃというのに、今日も今日とて現場をご主人に見つかって追いかけ回されたんにゃよ。
懲りないよねえ。
ご主人もお父さんもお母さんも、朔にゃあが窓から落っこちて車に曳かれてしまうのを心配しているんにゃよ。
びびりの朔にゃあだから、家出して遠くに行ってしまう心配はほとんどないんにゃけど、おうちの前はすぐ道路、という立地のため、交通事故が凄く怖いんにゃって。
以前、交通事故で猫を一匹亡くしているからなをさらにゃんだって。
朔にゃあは鈍くさいところがあるから、余計に心配するのかもね。
あたち?あたちは、時々玄関からお外を見るだけの良い子にゃもん。
なんて、内緒だけど窓を開けるのを覚えたの。
とは言っても二センチぐらいにゃんだけどね。
お外の匂いをかげるぐらいだけ。
このぐらいなら可愛いものでしょ?ちょっとした悪戯、で済ませられるぐらいの。
あたちは良い猫にゃんだもん。
にゃんにゃん。
姫猫日記14
んにゃ。兄姫(えひめ)にゃ。
この頃、暖かい日が増えてきたにゃあね。
でもご主人はアレルギーが悪化する季節が来た、って大変みたい。
花粉症もあるし、猫好きのくせに猫アレルギーもあるし、酷くなると喘息を起こすぐらいにゃの。
この季節、目も鼻もくしゃくしゃにして大騒ぎ。
あたちも側に寄るのを遠慮しなくちゃいけないかな、って思うぐらい。
でも、ね。あたち、ご主人の肩の上に乗るのが大好きにゃの。
抱っこされるとよじ登って肩の上に乗っかるの。
後ろ首を通って、両肩を行ったり来たりもするんにゃ。
肩の上に座り込んだり、その態勢で顔を舐めたりすりすりしたり。
そうやって顔の周りでうろうろすると、ご主人のアレルギーは悪化するにゃ。
あたち、結構甘えっ子にゃの。
そうやってご主人になつけなくなったら寂しくて死んじゃう。
でも、喘息の発作を起こしているご主人の様子を見ていると、可哀想だし辛いし。
あたち、どうしたら良いのかにゃあ。
え?まず、肩に乗るのを止めろって?
にゃあ!一番のスキンシップにゃのに?
小さい頃からの癖にゃのに?
ふみゃあ。ご主人のことを考えるといけないことだと判ってはいるんにゃよ。
でもね、でも、ないと寂しすぎるスキンシップにゃよ。
ふにゃあ!あたちの頭はウニになっちゃう!
考えるのには向いていないんにゃもの!
姫猫日記13
ふにゃお。兄姫(えひめ)にゃ。
ねえねえ、あたち、大発見したの。
世の中にはあたちたち猫族より優秀なハンターがいるんにゃね。
あたちも頑張ってねずをハンティングしてご主人にプレゼントしてきたけど、あれは、一回り上にゃったよ。
そうなの。シート型のネズミ捕り。
あたちは小型のねずをちょこちょこ捕っていたけど、あいつは超大型の親ネズミを拿捕しちゃったんにゃ。
お父さんが驚いたほどの溝鼠で、あたちの陰が一瞬にして霞んでしまったぐらい…。
人間って凄いものを発明するんにゃね。
あたちたち猫族の存在意義がなくなっちゃう。
って焦っていたらご主人が、「ネズを捕ってくれるのは嬉しいけど、姫にゃあの価値はそれだけじゃあないからね。」にゃって。
そりゃあそうかな、って思ったのは朔にゃあの存在を思い出したからにゃの。
朔にゃあは今まで一度もぬずを捕ったことがないのに、おうちでのさばっているものね。
ご主人に「甲斐性なし!」って叱られても何処吹く風。
何とも思っていないみたい。
ある意味、面の皮が厚いのかにゃあ。
一緒にいても朔にゃあの考えはいまいちわからにゃいのよね。
って、あたちが何考えているか判らない、って嘆くのはご主人にゃんだけど。
それにしても、でっかい溝鼠を捕まえてから、おうちのネズミ出没率が減ってきているから凄いよね。
それともそれって、このおうちが壊れてしまう前兆なのか知らん。
地震がきても我関せずのあたちの言えることじゃあないか。
にゃんにゃん。
姫猫日記12
にゃ。兄姫(えひめ)にゃ。
お母さんが帰ってきて、いつも通りに戻ったんにゃけど、おうちのネズミ被害が増大して大変にゃの。
新しく買ったばかりのガスレンジの電気配線をかじってあわやの事態になりかけたり、生ゴミを漁ったり…。
台所を我が物顔で伸し歩いたり、洗い物をしているご主人の足元を走り抜けたり…。
余りに酷いので、ご主人があたちに「ネズ、捕ってきて!」と懇願する始末。
あたち、冬の間はおこたでぬくねくして丸々してようと思っていたにゃよ。
でも、何度も何度もご主人に懇願されると流石に無視は出来にゃい。
んで、とうとうやったわよ!
二日続けてネズ二匹。
ちゃんとご主人にプレゼントしたにゃよ。
ご主人にあげたのにお父さんが持って行っちゃったのがちょっと不満にゃの。
でも、しっかりと褒めてくれたし、ご褒美もくれたにゃ。
隣で朔にゃあが羨ましそうに見ていたにゃ。
ご主人は「姫は偉い。ネズを捕る猫は良い猫だ。捕らない朔はヘタレだ。」って結構朔にゃあに冷たい態度。
あたちは撫でてもらってお腹もいっぱいで幸せ気分。
やっぱりがんばれば良いことがあるんにゃね。
まあ、ハンティングは趣味と実益を兼ねているから余計に楽しいし。
比べられてイジケている朔にゃあは自業自得として、あたちはもっとご主人のためにがんばるのにゃ。
にゃって良い猫にゃんだもん。
黒猫日記217
なあご。朔太郎にゃ。
お母さんが悔しいことに無事に帰ってきて、おうちはまた元通りに戻ったにゃ。
そしてお母さんは、相変わらずご主人のことを独り占めしてくれるにゃ。
僕も姫猫もそれが気にくわない。
好き勝手にご主人をひっ浚っていくの。
にゃから、時々目一杯意地悪をしてやるの。
普段、何もしないでいても痛がっている足をわざとふんずけてやるとか、寝ている時にわざとあたまをふんずけて通ってみたり、トイレに立つ時に足下にすり寄ってみたり。
結構ねちっこい嫌がらせだと自分でも思うにゃよ。
でも、これぐらいやらないと。
そりゃあご主人は、僕達に優しいし、お母さんも抱っこしたり撫でたり美味しいおやつをくれたりもするさ。
にゃから完全無視するのは止めているんにゃ。
嫌がらせで済ませてやっているにゃ。
僕らだってそのへんは弁えているにゃ。
ただ、感情が先に立つ場面が多いのは仕様がないよね。
ある意味、いなくなってくれた方がすっきりするんじゃないか、なんて考えて足下にすり寄ることもあるんにゃ。
けど、いなくなったらご主人が悲しむのも知っているし。
僕達はそんなことを望んじゃいにゃい。
にゃから、いつも「計画」だけで終わる暗殺なんにゃ。
この複雑な思い、ご主人はしっかりと判っているみたいにゃけどね。
黒猫日記216
うにゃん。朔太郎にゃ。
お母さんが入院したきりなもので、僕と姫猫は二匹でご主人争奪戦をやらかしているにゃ。
でも、この頃、気が付くとご主人がいない。
そうにゃの。お母さんの面倒を見に病院に通っているにゃよ。
視力は弱いし、足は血行不良で動かないし、だから歩けないし、透析には通っているしのお母さんは、今度はおっぱいにしこりが見つかったんにゃって。
一時は癌宣告までされちゃって、ご主人も落ち込んでいたけれど、良性だって判って一家で安心していたにゃよ。
だから余計に、今回の切除手術にはご主人も入れ込み方が違うにゃ。
親子の情ってものが凄いものだってことなのかしらね。
にゃから、僕達は寂しく二匹でお留守番にゃの。
でも、ご主人は疲れて帰ってきてもちゃんと僕達をかまってくれるんにゃよ。
代わり番こに抱っこしたり、ぎゅうしてくれたり。
そりゃあ、それだけじや物足りないけど、ご主人の一生懸命な姿を見ていると、あんまり我が儘を言っちゃいけない、と僕は思うんにゃ。
まあ、何もなければぼちぼちお母さんも帰ってくるだろうし、そうしたら少しは僕達の寂しさも癒されるだろうし、もうちょっとの辛抱かしらね。
以外と物わかりの良い僕です。にゃんにゃん。