黒猫日記215

みゃ。朔太郎にゃ。
この頃寒い日が続いているにゃあね。
僕と姫猫はおかげでこたつの住人と化しているにゃ。
義務になっているご主人のお出迎えすらサボって、こたつから抜け出せない日々を送っているんにゃ。
にゃから、夜になってご主人のご用事が一段落すると、僕と姫猫はご主人の機嫌を取るためと温もりを得るために、ご主人の膝のとりっこをしているにゃ。
代わり番こに乗っかったり、片膝に一匹ずつ乗っかってみたり。
ご主人のご機嫌を取り結んでおかないと、余計に寒い思いをする、お布団に入れてもらえないしっぺ返しがくるから、僕達は必死にゃ。
何せ今、僕らに甘いお母さんは入院中だし、全てはご主人のさじ加減一つ。
こうやってみると普段バカにしていたお母さんの存在に意外と価値があったんにゃ、と思うにゃ。
不思議にゃよね。
少し認識を改めにゃいといけないかにゃあ、とつらつら考えている僕にゃ。
でも、あのお母さんに今更おべっかを使う気にはなれないしにゃあ。
まあ、遠分帰ってこないみたいにゃから、帰ってきてから考えても良いか。
それまでは姫猫とご主人の争奪戦にゃ。
負けてなるものか!

姫猫日記11

んにゃあ。兄姫(えひめ)にゃ。
この頃、寒くなってあたちはおこたの住人になっちゃっているのにゃ。
お父さんのお仕事が夜のことが増えてから、昼間お父さんがおうちにいるから、おこたを付けていてもらえるのにゃ。
にゃから、暖かいこたつの中でぬくぬく。
お父さんがいないとこうはいかないのにゃよ。
お母さんもご主人も、どっちかと言うとおこたでじっとしてないタイプの人だから、エアコンを付けちゃうの。
まあ、いろいろおうちの用事があるものね。席が温まる暇もない、ってやつに近いかもね。
にゃから、お部屋全体が暖まるエアコン派にゃのかも知れにゃいね。
それに比べるとお父さんは、こたつに潜り込むとそれっきり。
トイレに立つ時とビールを取りに行く時、煙草を買いに行く時しか動かにゃい。
見事なまでに。
あたちですら感心するぐらいにゃから、ご主人が呆れるのも判るにゃよね。
ご主人曰く、「根っこが生えてる」にゃって。
お母さんもそれを聞いて苦笑い。
でも、それだけで済んでいるのは結婚三十五周年のキャリアなのかにゃあ。
ご主人は「結婚相手はあんな風じゃないのにする!」と宣言しているけど、お母さんはまた苦笑しているにゃ。
その心の中にどんな言葉があるのか、あたちは怖くて聞きたくないにゃ、と思ったのでした。
にゃんにゃん。

黒猫日記214

みゃお。朔太郎にゃ。
このところ寒くなってきたにゃあね。
僕達猫族にはこたつがありがたい季節にゃ。
やっぱりこたつ大好きお父さんが、こたつを使いだしたので、僕達もぬくぬくのおこぼれに与れている今日この頃にゃ。
お母さんがいつも通りにこたつの中に猫ベットを入れておいてくれたので、僕と姫にゃあは入れ替わり立ち替わり猫ベットで寝ているのにゃ。
この間テレビでやっていたけど、猫は輪っかの中に入りたがるんにゃって。
僕達にもその傾向はあるらしくて、まあるいものが大好き。
そりゃあ、一番は猫ベットにゃんだけど、その次がお母さんの円座かにゃあ。
丸くてふわふわしていると、もうそれだけで魅力的。
ついつい惹かれて形に添って丸くなってしまう。
なんでもこの輪っかのことを「猫ホイホイ」っていうみたいにゃけど、テレビではライオンさんも入っていたぐらいだから、猫族共通の魔力を持つものなのかもしれにゃいね。
でも、ほわほわ毛布も大好きにゃし。
う~ん…。やっぱり、丸くてほわほわが良い!ただ丸いだけでも、ただほわほわなだけでもない、丸くてほわほわ!
それが猫の幸福にゃ!
思わず断言してしまう僕なのでした。

黒猫日記213

みゃ。朔太郎にゃ。
姫猫がネズミを捕ったって、一家全員で大騒ぎ。
一躍姫猫はおうちのヒーローになっちゃった。
おかげで僕の株は下がりっぱなし。
「朔はネズミもとれない猫だ。」というレッテルはともかく、姫猫の捕まえたネズミを横取りしようとした、と疑われる始末。
一言言い訳させてもらえるならば、僕はネズミに興味を引かれただけで、姫猫の手柄を横取りしようだなんて考えていなかったんにゃよお。
つい、面白そうな玩具に手を出した、ってだけにゃんだよお。
にゃのに、にゃのに、ご主人のあの冷たすぎる視線は…。
どうせ、どうせ、僕はネズミも穫れない駄目な猫ですよ。
でもそれって、このおうちに貰われてきた時から宣言していたはずにゃもの。今更つべこべ言われても困るだけにゃ。
ほら、昔から言うにゃよ。抱き上げた時、足を縮めるのはネズミを捕る猫。だらんと伸びたままなのはネズミを捕らない猫、なんだって。
だから僕はあんよだらん組だったんだってば。
それなのに、やっぱりご主人は一言の元にこう言うの。「このへたれ!」
にゃんだか割に合わない気がする。
どうしても僕の待遇が悪いような気がする。
僕は確かにへたれかも知れないけど、優しさには自信があるんにゃよ。
まあ、それだけが取り柄と言えるのかも知れないけど。
だから、ご主人。
お願いだから、そう冷たい目で見ないで…。

姫猫日記10

にゃん!兄姫(えひめ)にゃ。
あたち、大活躍中にゃの!
今日も今日とてまたネズミの奴を仕止めてやったの。
三匹目にゃ。
うちにはお外から溝鼠が進入してくるらしくて、結構天井裏でガサゴソしている音が気にはなっていたんにゃ。
おうちには猫が二匹もいるのに…。っていうのがご主人のグチ。
あたちも天井を気にしながら、どうして良いか判らなかったから、臨戦態勢には入っていたんにゃけど成果は出なかったんにゃ。
やっぱりハンティングには年期と経験がものを言うらしいにゃ。
このおうちに来てから、ご主人にゴキブリをハンティングしてプレゼントしてきたのも無駄じゃあなかったんにゃ。
それに比べて朔猫は進歩がないにゃあ。
ネズミ捕りにはいっさい興味がないみたいにゃし。
あたち、甲斐性のない男って嫌いなのよね。
だから、この頃朔猫がすり寄ってきても猫パンチをお見舞いして撃退してしまうにゃ。
しようがないよね。あたちにだって不満はあるんにゃから。
朔猫は良く言えば優しいんにゃけど、悪く言えば優柔不断のヘタレだし。
にゃんでこんなのをお婿にしてやったのか、あたち、早まったかなあ。
まあ、しっかり尻にひいておけるから良いのかな。
猫の一生を考えると、その方が幸せかも。
ご主人が居ない時には甘えていられることだしね。
でも、せめて猫の本分のネズミ捕りに、もうちょっと情熱を傾けてくれたらいいのに、と思うあたちなのでした。にゃん、にゃん。

姫猫日記9

にゃ!兄姫(えひめ)にゃ。
聞いて、聞いて!
あたち、やったよ!
ついにやったよ!
ご主人を怖がらせて困らせていたネズミをやっつけてやったの!
台所で洗い物をしているご主人の側で、じっと待機しながら様子を窺っていたんにゃ。
いつもごそごそと出没する地点に目星をつけて。
いつかはきっと捕まえてやる、という決意を込めて。
あたち、じいっと機会を待っていたんにゃ。
そしたら、あたちがそんな風に待ちかまえているとはつゆ知らず、あいつはのそのそ現れたにゃ。
あたちは一気に飛びついて一撃必殺。
あいつはきゅうと一声鳴いて、それっきり手向かいできずにあたちの牙にかかったにゃ。
思ったより簡単に捕らえた獲物を持ってご主人に見せに行くと、ご主人たら複雑に強ばった表情で「よし、よし。」だって。
まあ、ネズミが苦手にゃって言ってるからしようがないかにゃ。
でも、そうやってネズミを弄んでいるあたちに、朔猫がちょっかいをだして横取りしようとするのには、ご主人が怒ってくれたんにゃよ。
自分が汗もかかないで苦労もしないで美味しいところを持っていこうとするにゃんて最悪にゃよね。
単にネズミで遊びたかっただけだとしてもあたちが怒るのも大目に見てもらえるよね。
ネズミはゴミ袋に入れられて、ゴミと一緒に回収されていったけど、あたちはもうちょっとネズミで遊びたかったかも。
まあ、また取ればいいか。
ハンティングはエキサイティングで楽しいから、飽きないと思うし、ご主人も喜んでくれるし、ね。
ともかく、有意義な夜でしたにゃ。

黒猫日記212

ふにぃ。朔太郎にゃ。
夜更かしで早起きのご主人は、夕方、お昼寝をするのが日課になっているのにゃ。
少しの時間だけど、そうしないと体が保たないんにゃって。
お父さんのお布団を借りてちょっと一休み。
気持ちがすっきりするんにゃって。
僕も一緒にお昼寝したくて、お布団まで行くんにゃ。
そして大好きな腕枕をしてもらうんにゃ。
幸せ…。
でもね、でも、長居ができにゃいの。
一緒にお昼寝ができにゃいの。
何故かって?
あのね、ご主人の左肩には今は亡き白猫れおん君がお守り猫としてしっかりくっついているんにゃ。
そのれおん君が僕に焼き餅を焼くんにゃ。
そしてその見えない前足で猫パンチをくれるんにゃ。
実体のない相手にはどう足掻いてもかなわないのが判っているから、僕はすごすごと退散するしかなくて…。
悲しいにゃあ。
僕もこのおうちに来てから三年。
その間、ずうっとご主人の隣で寝ようと頑張ったのにゃ。
だけど、ことごとくれおん君に阻止されたのにゃ。
デモね、聞いて!姫猫は除外されているの!
れおん君に追い出されることがないの!
酷いよね。にゃんで僕だけ…。
僕だけ目の敵にされているにゃ。
ふにゃあ。相手には最早実体がないからどうしようもないし、これ以上姫猫に敵対心を保つのも男としてどうか、と思うし。
ひたすら落ち込むしかない僕なのでした。にゃあ…。

黒猫日記211

みゃ。朔太郎にゃ。
僕の野生の本能は、去勢されても僕を突き動かすみたい。
どうしても年に三回ほど、押さえ切れない欲求が、僕を襲うのにゃ。
お外からおよその猫さんの鳴き声が聞こえたりするともう駄目にゃ。
無理矢理トイレの扉を開けて、唯一お外に向けていつも開いている窓をめがけてしまう。
さすがにもう落っこちるような真似はしないんにゃけどね。
まあ、足を滑らせれば話は別にゃね。
あとは姫猫のお尻を追いかけ回しちゃう。
お嫁さんにゃからかまわないと思うんにゃけど、ご主人が「みっともない!」にゃって。
それに、「姫を朔のお嫁さんにやった覚えはない!」にゃって。
まあ、それは、成り行きに任せて、ってことで…。
既成事実があればしようがないよね?
でも、そんな僕がいくら迫っても、避妊した姫猫はもう鼻も引っかけてくれないしぃ。
僕の本能は空振りばかり。
ねえ、ちょっとは同情してくれてもいいと思うのは僕だけかしらん。
僕のそういう行動にはご主人、冷たい視線を向けるだけにゃんだ。
まあ、うら若き女性の立場だと嫌がるんだろうなあ。
このままだと僕は、ご主人からも姫猫からも嫌われてしまうのかしら…。
きゃ~!それだけは回避したい僕にゃのです。

黒猫日記210

なあご。朔太郎にゃ。
うちの姫猫はぜえったいマザコンにゃ。
ご主人にほ乳瓶で育てられたからかもしれないけど、いつもご主人にべったり貼り付いているにゃ。
小さい時はずっと肩の上に乗っていたにゃ。
ご主人は肩に姫猫を乗っけたまま移動していたにゃ。
今は重くなったから、さすがに乗っけ放しにはしないみたいだけど、ぴとっとひっつくのは変わりないにゃ。
ご主人もそんな姫猫が可愛いって目を細めているし、お父さんもお母さんも僕より姫猫の方を贔屓にしている気がするにゃ。
まず、毛皮の手触りがよいのが武器かにゃ。
それから余りにもおバカで笑えるとことか。
あと必殺技のごろんしてお腹出しのポーズ。
姫猫がこれをやるとみんなデレデレ…。
ついつい手を出してお腹を撫でてしまうにゃ。
そうやってみんな姫猫をちやほやするから、姫猫は頭に乗ってあんなに我が儘放題にゃんだ!
そうにゃよ。僕は焼き餅を焼いているんにゃよ。
にゃって、みんなして姫猫ばかり構って、僕のことなんか二の次…。
ご主人と一緒に寝たいのに寝てられないし、だんだん僕の立場がなくなるにゃ。
だもんイジケてもいいじゃん!
にゃー!
ご主人を独り占めにしたいにゃ!
それが今、僕の最大の望みにゃ。

姫猫日記8

んにゃおん。兄姫(えひめ)にゃ。
姫にゃあ、と呼んでね。
でも本名は兄橘姫(えたたちばなひめ)つていうにゃ。
そう、あたちは男二人、女二人の四人兄弟で拾われたの。
それだから妹は弟橘姫(おとたちばなひめ)って名前でおとひめってよばれていたんにゃよ。
両方とも大和武尊(やまとたけるのみこと)の奥さんだったお姫様の名前から取ったんにゃって。
お母さんの趣味にゃ。
あたちとしては普段は姫にゃあ、で済んでいるから別にかまったことじゃあにゃいし。
でも、結構ご大層な名前を付けられて貰われていった子達はどうしたんにゃろうにゃあ。
結構迷惑しているかも。
お母さんのネーミングセンスは特別製みたい。
一番最初に飼った猫には「にゃごのすけ」って付けて「にゃん」って呼んでいたらしいよ。
その後、「にゃごのすけ」は五代目までいたらしいんにゃけども。
それからはしばらく猫さんを飼えなかった時期があって、その後ご主人のお稽古場からやってきたのが「レオ」君。
なんとレオタードからきているんだって。これはさすがにお母さんのネーミングじゃないんだって。
次に来たのは「かずひこ」。
うちにきた時、風邪をひいていて、お父さんが「風邪ひき猫」って呼んでたところからきたんにゃって。
その次が「れおん君」。
これは素直に余りにも「レオ君」ににていたから。
そして「朔太郎」。これは月のない朔の日から来ているんだけど、本当は最初女の子だと思われていて拾った子が「さくら」って名付けていて、ご主人が「さく」って呼ぶようになった時、男だって判って、んじゃあ「さくたろう」だね。って決まったんにゃ。
まあ、漢字はお母さんが丁度良い名前を見つけてあててくれたんにゃよ。
そしてそれから後が大変。
ご主人が拾ってきた姉弟は「此花咲也姫(このはなさくやひめ)」と「月夜麿(つきよのまろ)」。
その後拾った子猫は真っ黒だったから輝夜姫(かぐやひめ)。
お姫様シリーズか知らん。
ね、お母さんのネーミングって変わっているでしょ?
まあ、あたちも朔太郎にゃあももう遠分元気で長持ちするつもりにゃ。
だからお母さんが名前に頭を痛めることもあまりないにゃろうにゃ。
にゃあ。にゃ