黒猫日記118

んにゃ。朔太郎にゃ。
お母さんの調子が悪いと、ご主人がやたら忙しがって僕をかまってくれないんにゃ。
お母さんの面倒を見て、お父さんの面倒を見て、なんてやっていると、「さくにゃあにまでかまっていられない。」んにゃって。
ぐすん。そりゃあ、うちのお父さんは手間のかかる人にゃ。
お母さんがいつもぼやいてるにゃもん。「仕事以外はなんにもしない人」にゃんだ。
おうちに帰ってきて、定位置の座椅子に座ると、もうそれきり動かにゃい。
今はお母さんが動けないから、トイレに立つついでに自分でビールを冷蔵庫から出したりもするようになったんにゃけど、昔はお母さんが靴下を脱がせたり、お風呂まで連れて行って頭からつま先まで洗ってやったりしていたんにゃって。
「そうやってお母さんが甘やかしたから、今私が苦労する。」ってご主人はしかめっ面。
「将来、結婚したら役に立つから。」とお母さんが慰めているにゃ。
んにゃ?結婚って何にゃ?
「相手を見つけてから言ってくれ。」とはご主人の反論。
にゃあ。なんか異常に気になる単語が出て来たにゃ。
思わずお母さんに「?」って聞いてみたんにゃけど、いつもは僕の思いを言葉に出さずとも察してくれるのに、今回はお母さんからも「さくにゃあ、なあに?」の疑問符。
んにゃあ。けれども、無口が男の魅力だと信じている、本当はボキャブラリー不足の僕としては、「それって何?何のこと?」って追求するのも美学に反するにゃ。
にゃから、この頃は横目でお母さんを睨みながら「この分からず屋!どーして汲んでくれにゃいの!」というオーラを飛ばしまくる僕なのでした。にゃんにゃん。

黒猫日記117

ふにぃ。朔太郎にゃ。
この頃、寒い日が増えてきたにゃね。
僕は明け方の寒さに耐えかねて、お母さんのお布団に逃げ込む日々にゃ。
ところで、お父さんはお家の中では僕の次に寒がりにゃんだよ。
そして、お母さんとご主人の「十二月にならないとおこたは出さない」宣言に思い切りへこんでいたにゃ。
あまりにも寒がるお父さんを見かねてお母さんが、電気膝掛けを貸してあげたら、お父さんは大喜びでぬくぬく。
僕も便乗して膝掛けを掛けたお父さんのお膝でぬくぬく。
にゃあ。暖かいのは幸せにゃあね。
でもそんな僕に、一つ心配事が出来たにゃ。
お母さんの体調がいまいち良くないんにゃよ。
この間は、丸一日かけて検査して、僕も迷惑を被ったにゃ。
この分じゃ、入院かな、ってご主人も心配しているにゃ。
僕としては寒い朝に温もる場所がなくなるのがつらいにゃあ、と今後の寝床の心配をしなくてはならなくなって大変にゃ。
お母さんはどうしてそんなに病院が好きなんにゃろうね?
おうちで僕と一緒にいた方がいい、ってしょっちゅう言っている癖に、すぐ入院しちゃうんにゃ。
まったく人間ってよく分からないにゃあ。

黒猫日記116

みゃ。朔太郎にゃ。
ここのおうちには猫に科せられた色々なお仕事があるんにゃ。
まず、朝晩のかりかりを貰う時には「お手、お代わり、両手」をしなくちゃいけないんにゃ。
それから、ご主人のお出迎え。
まあ、それは好きでやってるにゃけど。
それからお父さんの晩酌のお付き合い。
これは美味しいおまけが付くから大歓迎にゃ。
でもこの頃、お父さんたら僕に「ちゃんと『ごはん』って言え。」って強制するんにゃよ。
先輩猫のれおん君は、お腹が空くと『ごはん!』って鳴いて、催促したんにゃって。
にゃから僕にも出来るだろうって、短絡的な考えにゃんだ。
まったく、何かって言うと比べられる、こっちの身にもなって欲しいにゃあ。
本当、出来の良い先輩の後釜は大変にゃよ。
僕には僕しかやらない特技もあるんにゃよ。
にゃけど、そのことにプラスして、れおん君のやっていたこともやれなくてはいけない、にゃんてちょっと理不尽にゃと思わにゃい?
ある意味、このおうちの人たちは猫使いが荒い、と言えるのかも、と考えてしまう僕なのでした。にゃんにゃん。

黒猫日記115

にゃあご。朔太郎にゃ。
朝晩、寒くなってきたにゃあね。
姫にゃあと月にゃあが何日かいたことを忘れられないお父さんは、「秋生まれの子猫をスカウトしてこよう。」にゃんて言い出しているんにゃよ。
僕がお父さんと一緒に寝たがらないから、にゃんだって。
僕にだって好みとか事情とかいろいろあるのを分かってくれないんにゃよ。
お父さんは煙草臭いし、第一ご主人みたいに柔らかいぱいぱいがないじゃにゃい。
にゃあ。でも僕は悲しいことにまだご主人と一緒に寝たことがないんにゃ。
そりゃあ、一生懸命一緒に寝ようとお布団に潜り込んでみたりはしているんにゃよ。
にゃけど、ご主人にはしっかりとお守り猫が付いているんにゃもん。
そうなんにゃ。先輩猫のれおん君。
彼は一旦天国に行ったんにゃけど、すぐにご主人の守護霊として戻って来たのにゃ。
天国で修行して生まれ変わってくるよりも、ご主人の側にいて見守る方を選んだんだ、ってお母さんは教えてくれたにゃよ。
まあ、そんだけ「ご主人命」の猫にゃんだ、と言われたらそれまでにゃんだけど、僕としては目の上のたんこぶ、そのものにゃ。
実体もない癖に、眼力は物凄いし、迫力はあるし、猫パンチは鋭いし。
にゃー!どうして僕だけこんな苦労をしなくちゃいけないんにゃ?!
僕はただご主人と一緒に寝たいだけなのに…。
うにゃあ。これが運命、というものなら、僕はどうしたらいいんにゃろう…。

黒猫日記114

にゃ。朔太郎にゃ。
僕は、ご主人に言わせると変なところだけ器用にゃんだって。
まあ、我ながら偏屈で頑固なのは認めるところにゃんだけど、なににせよ、そうやってご主人に褒めてもらえるのはうれしいにゃ。
え?何をやらかしたかって?
にゃあ。あのね、おうちのトイレは、あ、勿論人間さん用の方ね、ドアじゃあなく引き戸にゃんだけど、僕、それを開けちゃうんにゃ。
以前から、お父さんやお母さんがトイレに入る時、どさくさ紛れのようにして一緒に入っちゃう癖があったんにゃ。
にゃけど、この頃、お母さんがおうちに帰ってくると、誰もトイレを使う人がいないのに、トイレの扉が少しだけ開いている、って現象が続いて、不思議に思っていたんにゃって。
それをご主人に話したら、ある晩、夜更かししていたご主人は、僕が爪を引っかけて扉を開けるところを偶然目撃したんにゃ。
驚いたご主人は思わず「さくにゃあ、あんた、まあ、なんて器用なことを…。」って呟いたのを僕は聞いたのにゃ。
僕の趣味には「黒猫探検隊」というものもあるにゃ。
好奇心の赴くまま、普段入ると怒られる場所なんかを、みんなが寝静まった夜中とか、お留守番をさせられている昼間に片っ端から入ってみるのにゃ。
おふろ場へ行くドアと押入とご主人の衣装ダンスはもうクリアしたんにゃ。
にゃからトイレは最後の砦みたいな場所だったんにゃ。
ご主人は「まあったくもう…。」って言いながら僕を見つめるにゃ。
僕は鼻高々で少しいい気分にゃ。
(あのね、さくにゃあ。私は決して褒めてはいない。どちらかというと呆れている。どうしてこう、どうしようもないことばかりをやらかすかなあ…。by飼い主)

黒猫日記113

なあお。朔太郎にゃ。
急に涼しくなってきたにゃあね。
キンモクセイのお花がどこかで咲いたらしくて、お外がすごくいい匂いにゃ。
この辺りにはキンモクセイを植えているおうちが多いんにゃね。
おうちの蜜柑の木にやって来ていた蝶々さんも一段落したみたいで、卵や幼虫を排除するご主人の発する奇声もめっきり減ってきたにゃ。
世の中、すっかり秋なんにゃね。
おかげで明け方にゃんかとっても寒くて、僕がこの夏、陣取っていたお父さんの座椅子の上では凍えてしまうんにゃ。
かとはいえ、大好きなご主人は相変わらず寝相が悪くて、僕がお布団に一緒に入って温もることはできないんにゃ。
にゃから僕は仕方なしに、お母さんの枕元に行って、襟首の辺りをとんとん。
代々の猫さんと一緒に寝ていたお母さんにゃから、半分眠っていても条件反射でお布団を持ち上げてくれるんにゃよ。
そこで僕はしゅるんとお布団の中に潜り込むんにゃ。
にゃ~。人肌は温いにゃね。
そうして僕は、お母さんが起き出すまで、お母さんの腕枕でぬくぬく。
まあ、一番いいのはご主人の腕枕にゃんだけど、この際、贅沢は言っていられにゃい。
猫は寒いのが大の苦手にゃんだから。

黒猫日記112

みぃ。朔太郎にゃ。
僕ね、この頃になって大好きになったものがあるんにゃ。
去年までは全然興味も示さなかったものにゃんだ。
それはね、ほとんどの猫さん達が大好きな「鰹節」にゃの。
やっぱり、れおん君は好物で、おやつによく食べていたんにゃって。
だけど、僕は何故か、去年までは臭いを嗅ぐだけで見向きもしなかったんにゃ。
それにゃのに、この夏になってからは、お父さんのおつまみの冷や奴に乗っかっている鰹節を皮切りに、とうとうパック入りの鰹節が食べられるようになったんにゃ。
そして、今では大好きにゃ。
ずうっと、鰹節は猫用と人間用とふた袋を常備していたおうちだから、最初、僕が鰹節は嫌いらしい、と知って、お父さんなんかすごくがっかりしていたんにゃ。
お父さんの楽しみは、猫を相手に晩酌すること。
にゃから、猫に与えられるものは不可欠にゃんだけと、やっぱり猫にも好き嫌いはあるにゃ。
たまに、どうしても猫にはあげられないものばかりがおつまみに出る時もあるにゃ。
そうなると、お父さんが可哀想。
ってことで、お父さんのところには、鰹節が備え付けになっているんにゃ。
その方が猫にも良いんにゃけど、ね。
お父さんは新聞紙に鰹節を乗せてくれるんにゃ。
そして、その鰹節が僕の鼻息で飛んでいくのが面白い、って大笑いするんにゃ。
昨日にゃんか僕の鼻の頭に付いた鰹節がひらひらしている、って家族三人で大騒ぎ。
にゃあ。まあ、そうやって家族団欒のお役に立てているんにゃから、僕としては不満はにゃいんにゃけど、この家族は結構たわいもないことで笑いこける幸せな家族にゃんだにゃあ、と僕は思ったのでした。にゃん、にゃん。

黒猫日記111

みゃあ。朔太郎にゃ。
うちの家族が全員、アニメ好きだっていつか話したにゃね。
今、ご主人が夢中になっているのは「タイ・バニ」にゃんだ。
昨日はオールナイトだとかで、僕のことを置き去りにしてお出かけしちゃったんにゃよ。
んにゃあ。実在する男とデート、っつーならひたすら焼き餅焼いて引き留めても、僕の体面は保てると思うんにゃけど、相手がアニメじゃあ…。
寂しくお見送りする僕にお母さんが一言。
「耐えてる背中が男だね。」
にゃあ。男って耐えるものなんにゃね。
慰めにならない慰め方をしてくれたお母さんは「夏目友人帳」っていうアニメがご贔屓にゃんだ。
その中のにゃんこが「とっても可愛い!」んにゃって。
にゃんこ、とはいっても猫の姿を借りた妖怪、って設定にゃんだけど、お母さんには関係ないみたい。
そうしたらご主人がゲーセンでその「にゃんこ先生」のボトルキャップをクレーンゲームで取って来たんにゃ。
お母さんは大喜び。でも「どうせなら、黒バージョンも欲しいな。」にゃって。
以前、同じアニメに出ていた黒いにゃんこ先生。それも欲しいにゃんて欲張りなお母さんにゃ。
そしたら、「黒かったらさくにゃあにそっくりだと思わない?」にゃって。
にゃー!僕はあんなに丸くにゃい!僕はあんなに不細工じゃにゃい!
僕は猛抗議しているにゃけど、ご主人は大笑いしながら、「うん、似てる!そっくり!」にゃって。
そして、「今度は黒いのを取ってくるね。」って大乗り気。
ふにゃあ。いじけてやる。僕は絶対あんなのに似てなんかいにゃい!ふん!

黒猫日記110

にゃっ。朔太郎にゃ。
昨夜、僕はお父さんに拿捕されて、手っての爪を切られちゃったんにゃ。
おうちの猫は、爪を切らなくちゃいけない、っていうのが代々の猫さんに科せられた指令。
「れおん君は良い子にして爪を切らせてくれたんだよ。」ってご主人は言うにゃ。
「れおん君はお母さんに切って貰っていたんだけどね。」
そうにゃの。僕はお父さんの強い腕にしっかりと捕まれての爪切り。
「いやがって逆らって、暴れるから。お母さんには怪我させられないから。」って僕の足を押さえる手助けをしているご主人。
にゃ~。僕だって怖くなかったら暴れたりしないんにゃよ。
でも、猫の爪には神経が通っているから、少し切り過ぎると物凄く痛いにゃ。
それがあるから、まだまだ爪切りに慣れていない僕は、いやがるし逃げたがるにゃ。
それは仕様がないことじゃにゃいのかにゃあ。
僕のそんな内心の呟きが聞こえたものか、ご主人曰く。
「だから、お母さんではなく、二人係でこうやっているんだよ。猫の爪には毒があるからね。この間もさくにゃあがひっかいたから、お母さんに病院から抗生物質のお薬が出たくらいなんだよ。」
にゃあ。それって大袈裟すぎにゃい?って思っていたら、
「今のお母さんは免疫機能がないんだよ。さくにゃあが暴れなければ何の問題もないんだよ。」にゃって。
にゃあ。そうにゃんだ。
って納得はしたけど、やっぱり怖いものは怖いにゃ。
お父さんの真剣な顔や爪切りも。
ふぎゃあ。こればっかりは僕が慣れるまで待っていて貰うしかにゃいと思うにゃ。
ふん、どうせ小心者にゃ。悪かったにゃ。

黒猫日記109

ふにゃあ。朔太郎にゃ。
僕ね、この頃やっと玄関の段々の下まで降りられるようになったんにゃよ。
この夏、ご主人が、植木鉢の蜜柑の木に産みつけられる揚羽蝶の卵と幼虫達を退治するのを見るために、おそるおそるだけど降りられるようになったんにゃ。
蜜柑の木は、お母さんが去年の春先に、食べていた柑橘類の種を植木鉢に試しに植えたものが芽を出した、という変わり者で、ご主人もお母さんも成長を楽しみにしているんにゃよ。
にゃから、蝶々の幼虫とはいえ、食べられて禿げ茶瓶になって枯れてしまうのはイヤにゃんだって。
にゃけどご主人は、未だうら若い女の子にゃ。
にゃから、葉っぱの上に幼虫さんを発見すると、「キャー!」って叫ぶんにゃ。
僕はその声を聞いて、途端に心配になって、ご主人の姿が見える段々の下まで降りざるを得なくなっちゃうの。
そういう訳で、今年の夏は揚羽蝶が大活躍してくれたおかげで、僕は段々の下、車道の上まで降りることが出来るようになったんにゃ。
でも、人間って不思議にゃね。
ご主人たら、「キャーキャー」言いながらも、ちゃんとミニスコツプで幼虫さんを捕獲すると排水溝へと落とし込む、というかなりすごい作業をこなしているにゃよ。
そんなに恐ろしければよせばいいのに、と思っているのは僕だけなのかにゃあ?