姫猫日記9

にゃ!兄姫(えひめ)にゃ。
聞いて、聞いて!
あたち、やったよ!
ついにやったよ!
ご主人を怖がらせて困らせていたネズミをやっつけてやったの!
台所で洗い物をしているご主人の側で、じっと待機しながら様子を窺っていたんにゃ。
いつもごそごそと出没する地点に目星をつけて。
いつかはきっと捕まえてやる、という決意を込めて。
あたち、じいっと機会を待っていたんにゃ。
そしたら、あたちがそんな風に待ちかまえているとはつゆ知らず、あいつはのそのそ現れたにゃ。
あたちは一気に飛びついて一撃必殺。
あいつはきゅうと一声鳴いて、それっきり手向かいできずにあたちの牙にかかったにゃ。
思ったより簡単に捕らえた獲物を持ってご主人に見せに行くと、ご主人たら複雑に強ばった表情で「よし、よし。」だって。
まあ、ネズミが苦手にゃって言ってるからしようがないかにゃ。
でも、そうやってネズミを弄んでいるあたちに、朔猫がちょっかいをだして横取りしようとするのには、ご主人が怒ってくれたんにゃよ。
自分が汗もかかないで苦労もしないで美味しいところを持っていこうとするにゃんて最悪にゃよね。
単にネズミで遊びたかっただけだとしてもあたちが怒るのも大目に見てもらえるよね。
ネズミはゴミ袋に入れられて、ゴミと一緒に回収されていったけど、あたちはもうちょっとネズミで遊びたかったかも。
まあ、また取ればいいか。
ハンティングはエキサイティングで楽しいから、飽きないと思うし、ご主人も喜んでくれるし、ね。
ともかく、有意義な夜でしたにゃ。

姫猫日記8

んにゃおん。兄姫(えひめ)にゃ。
姫にゃあ、と呼んでね。
でも本名は兄橘姫(えたたちばなひめ)つていうにゃ。
そう、あたちは男二人、女二人の四人兄弟で拾われたの。
それだから妹は弟橘姫(おとたちばなひめ)って名前でおとひめってよばれていたんにゃよ。
両方とも大和武尊(やまとたけるのみこと)の奥さんだったお姫様の名前から取ったんにゃって。
お母さんの趣味にゃ。
あたちとしては普段は姫にゃあ、で済んでいるから別にかまったことじゃあにゃいし。
でも、結構ご大層な名前を付けられて貰われていった子達はどうしたんにゃろうにゃあ。
結構迷惑しているかも。
お母さんのネーミングセンスは特別製みたい。
一番最初に飼った猫には「にゃごのすけ」って付けて「にゃん」って呼んでいたらしいよ。
その後、「にゃごのすけ」は五代目までいたらしいんにゃけども。
それからはしばらく猫さんを飼えなかった時期があって、その後ご主人のお稽古場からやってきたのが「レオ」君。
なんとレオタードからきているんだって。これはさすがにお母さんのネーミングじゃないんだって。
次に来たのは「かずひこ」。
うちにきた時、風邪をひいていて、お父さんが「風邪ひき猫」って呼んでたところからきたんにゃって。
その次が「れおん君」。
これは素直に余りにも「レオ君」ににていたから。
そして「朔太郎」。これは月のない朔の日から来ているんだけど、本当は最初女の子だと思われていて拾った子が「さくら」って名付けていて、ご主人が「さく」って呼ぶようになった時、男だって判って、んじゃあ「さくたろう」だね。って決まったんにゃ。
まあ、漢字はお母さんが丁度良い名前を見つけてあててくれたんにゃよ。
そしてそれから後が大変。
ご主人が拾ってきた姉弟は「此花咲也姫(このはなさくやひめ)」と「月夜麿(つきよのまろ)」。
その後拾った子猫は真っ黒だったから輝夜姫(かぐやひめ)。
お姫様シリーズか知らん。
ね、お母さんのネーミングって変わっているでしょ?
まあ、あたちも朔太郎にゃあももう遠分元気で長持ちするつもりにゃ。
だからお母さんが名前に頭を痛めることもあまりないにゃろうにゃ。
にゃあ。にゃ

姫猫日記7

にゃん。兄姫(えひめ)にゃ。
この頃、ご主人がお出かけ中でお留守がちにゃの。
放っておかれるあたちもさくにゃあも、少しイジケ気味。
ご主人が居ないと何となく食欲も進まないんにゃよ。
お母さんにおやつをねだるのも面倒になっちゃうぐらい。
そうやってウジウジしていたら、ご主人たらあたちに新しい玩具を用意してくれたんにゃ。
手袋みたいに手を入れて、あたちにひっかかれても噛みつかれても猫キックを浴びせても痛くないぬいぐるみ。
口もぱくぱく動くから、あたちの戦闘意欲も攻撃本能も満足させてくれるし、思いっきり暴れてもご主人に被害がない、ってところが一番良いにゃ。
今までは、ちょっとじゃれてもご主人の体のあちこちにひっかき傷がついたり痛い思いをさせちゃっていたから、あたちとしては遠慮していたこともあるし、それがなくなっただけでもすんごく楽しいにゃ。
これであたちのストレスも解消されそう。
でも、ご主人がまめにかまってくれるのが一番良いんだけどにゃ。
まあ、それはご主人にもご用事も都合もあるから、あたちの我が儘なのは充分承知しているにゃよ。
でも、猫って我が儘なものにゃもの。
あたちがこうやって呟いていても別にかまわないと思うんにゃ。

姫猫日記6

にゃん。兄姫(えひめ)にゃ。
ねえ、聞いて、聞いて。
あたち、頑張ったの。
お父さんのビールの入った段ボール箱の陰で、息を潜めて待っていたの。
このところ天井裏を我が物顔で走り回るあいつ。
そう、ねずみ。
夜になって台所仕事が終わると、下に降りてくる、って知っていたの。
だから、真っ暗な台所の隅で、ひたすら待ち構えてやったの。
そうしたら案の定、あいつは現れたの。
あたちは猛ダッシュで飛びつき、一撃で捕獲。
意外と簡単だったにゃ。
しばし弄んでやってから、おもむろにご主人の元へ。
ご主人の前に行くとご主人たら変に裏返った声で「えらい、えらい。」って褒めてくれたにゃ。
あたちは得意絶頂で、お母さんにも見せびらかしたにゃよ。
そのあと、まだ生きていたあいつを、ご主人が始末しようとしたんにゃけど、ご主人たら腰が引けておっかなびっくり。
まごまごしているところであいつは隙を見つけたらしく逃走。
あたちはすぐさま追いかけたんにゃけど、冷蔵庫の下に潜り込まれて結局あいつに脱走されちゃったにゃ。
もう、ご主人たら何をやっていることやら。
せっかく捕ったねずなのに、まんまと逃げられるにゃんて。
さすがにご主人も残念だったのか、「ねずは苦手なんだよ~。お父さんがいたら良かったんだけど。」だって。
そうなの。お父さんはお仕事で留守だったの。
そしてご主人は半分安心のため息。
でも、あたちは諦めきれずにしばし待機。
だけどあいつも命がけ。もう広い所まで出て来ない。
結局、あたちのハンティングはご主人のせいで不成功に終わったみたい。
まあ、ご主人が良いならそれでも良いかにゃ。
ねずの完全捕獲はまたの機会でもあたちはかまわにゃいし。
そうしたらまた褒めてもらえるし。
でも何でご主人はねずが苦手にゃんだろうにゃあ。あんな面白いおもちゃは滅多にないのにね。
また捕まえよおっと。

姫猫日記5

んにゃ。兄姫(えひめ)にゃ。
姫にゃあと呼んでね。
お父さんは「ちび」って呼ぶのよね。
ご主人は「姫ちゃん」て呼んでくれるの。
あたち、ご主人に呼ばれるのが好きにゃの。
呼ばれるとすぐ駆けつけちゃう。
わんちゃんじゃあないんだから、って言われるけど、ご主人に呼ばれるのは別格にゃのよね。
お母さんやましてやお父さんが呼んでもそんな気ににゃらないもん。
ご主人限定にゃの。
ご主人が大好きにゃの。
にゃからトイレに目お風呂にもついて行くの。
トイレのドアの前でひたすら鳴くし、お風呂場の扉は開けるし。
終いには風呂桶に落っこちちゃうけど、ご主人と一緒がいいの。
肩に乗っかって移動は序の口。
ご主人の半天に埋もれてのお昼寝も大好き。
ご主人の匂いに包まれて、ってすごく幸せ。
まあ、それはご主人のいない時の話だけどもね。
あたちのご主人は結構忙しい人で、ずうっと一緒にはいてくれないんにゃ。
それがあたちには不満にゃんだけど、ご主人にはご主人の事情があるんにゃ、と思って我慢しているにゃ。
でも、寂しいのがたまらなくなると半天にくるまるの。
ご主人はあたちの気持ちが解るのかしらね。
「姫ちゃんは可愛い。」ってぎゅうしてくれるにゃ。
あたちもそんなご主人にメロメロにゃ。
ご主人を独り占めできたらいいのに、と思う今日この頃なのにゃ。

姫猫日記4

なあご。兄姫(えひめ)にゃ。
おうちの人達はかなりアニメ好きで、今、結構はまっているのが『弱虫ペダル』ってアニメにゃの。
その中に出てくる劇中アニメのアニメソングの「ひ~めひめ、ひめひめひめ」がご主人とお母さんの大のお気に入りにゃの。
あたちのテーマソングみたいにしていて、あたちを呼ぶ時に使うんにゃ。
別にアニメの主人公が気に入った訳じゃなく、その劇中アニメが気に入った、っていうのが取っ掛かりにゃの。
まあ、一家そろってアニオタにゃから仕方にゃいかにゃ。
あと、『銀ぎつね』ってアニメもお気に入りみたい。
「みかん」って言うと「DVD」って返して「みかん」で「ブルーレイ」、最後の「みかん」で「食べたい!」。
この掛け合いが我が家では流行っているんにゃ。
アニメのきつねさんは本当に好きみたい。
他にも式神で可愛いきつねさんが出てくるのにきゃあきゃあ言っているにやよ。
耳とほわほわ尻尾がたまらないんにゃって。
にゃからおうちには猫が二匹もいるんにゃね。
冬場は静電気が辛いけど、毛皮の手触りがよい、ってあたちの毛皮がお気に入りだし。
まあ、なで回されているのが嫌いじゃにゃいから良いかなあ。にゃあご。

姫猫日記3

にゃ。兄姫(えひめ)にゃ。
ご主人はあたちのことを「姫ちゃん」って呼ぶにゃ。
朔太郎おいちゃんは「さく」って短く呼ばれるにゃあよ。
やっぱりあたちは別格なのよね。
でもね、お父さんに言わせるとさくおいちゃんは「くろ」で、あたちは「ちび」にゃの。
お父さんたら、いくら言っても、名前を覚えてくれにゃいの。
それで、見たまんまに「くろ」と「ちび」。
これってあんまりにゃと思わにゃい?
さくおいちゃんはおパンツはいているだけで、上から見ると黒いから「くろ」でも許されるかもしれにゃいけど、あたちはもう避妊も済ませた立派な大人、レディーにゃよ。
体重だって四・四キロもあるんにゃよ。
「ちび」なんて失礼にゃと思わにゃい?
お父さんには微妙な乙女心なんか判らにゃいのね。
ご主人はそれがお父さんだ、と笑うんにゃけど、あたちは納得がいかにゃい。
デリカシーがないと思うんにゃ。
と言うよりも、想像力の欠如、にゃのかしらん。
ご主人とお母さんはお父さんと違う世界で生きているみたいな時があるにゃ。
って、あたち達の考えていることが判るみたいにゃんだもの。
でもお父さんは違うんにゃ。
にゃから時々面倒くさいにゃ。
本当、困ったお父さんなんにゃよ。
でも、あたち達のこと、可愛がってくれるから、まだ許せるかにゃ。
にゃよにゃん。

姫猫日記2

にゃあ。兄姫(えひめ)にゃ。普段は姫にゃあと呼ばれているにゃ。
あのね、おうちの猫達には何かしら芸をしなくてはいけない、というしきたりがあるらしく、あたちにも何か覚えさせようとお父さんとお母さんが一生懸命になっているにゃあよ。
まずは伝統芸の「お手」。
代々の猫はちゃんと出来たんだって。犬じゃなく猫なのにね。
ちなみに朔太郎おいちゃんも出来るんにゃよ。
でもあたちには結構難しいの。
物覚えは性格にもよるらしいんにゃけど、あたちは猫らしい猫にゃから、みたいよ。
あっけらかんとして日和見主義で利己主義。
おうちに来た猫達の中では一番のおばかさん、ってご主人は言っているにゃ。
でも、ばかな子ほど可愛い、とも言っているにゃあよ。
うん、ご主人はあたちの事が可愛くて仕様がないんにゃって。
にゃから甘やかして、、芸一つしないばか猫になるんだ、ってお父さんにイヤミを言われているにゃ。
いいじゃんねえ。甘えていても。それでご主人が喜ぶんにゃもの。
ほ乳瓶で育てて貰ったあたちにゃ。
ご主人は母親みたいなものにゃもの。
お風呂やトイレに行って姿が見えなくなると探すし、お外に出掛ける時は追いかけ鳴きをするし。
困ったちゃんだね、とはご主人のお言葉。
でも、決して嫌そうじゃないもん。あたちはにゃからこのままで良いんにゃよね。
うん、ご主人が良いのにゃから、「お手」が出来なくてもかまわにゃい、と居直っているのかもしれにゃい。
まあ、良いか。

姫猫日記

にゃ。あたち兄姫(えひめ)にゃ。
どーして兄姫かというと、四匹兄弟で拾われてそのうち二匹が女の子で、歴史好きなお母さんが、倭武尊の奥さんで姉妹だった兄橘姫(えたちばなひめ)と弟橘姫(おとたちばなひめ)からとったんにゃって。
ややこしいから兄姫(えひめ)、弟姫(おとひめ)とよぶことにしたんにゃ。
弟姫はわりとすぐに貰い手が見つかって、お兄ちゃん達も貰われていって、結局、あたちだけ売れ残っちゃったの。
だからこの頃は兄姫の兄までとれて、「姫ちゃん」て呼ばれているんにゃ。
お母さんは「名前負けしてるよね。」って言うんにゃよ。自分で付けといて、ね。
ご主人も弟姫は美猫で温和しくて、小さくて可愛かったけど、姫ちゃんは不細工だから。」なんて言っているにゃ。
あたちは不器量でお転婆。その自覚くらいあるにゃよ。
でも、ご主人はそこも含めてあたちのことが大好きだから問題はないんにゃ。
ただお母さんが今頃になって「やっぱり名前を付け間違えたかな。」なんて言っているにゃ。
あたちの顔を見る度に「源氏物語の末摘花(すえつむはな)」を連想するんにゃって。
そのお姫様は不細工で鼻が大きくて赤かったんにゃって。
あたちも鼻のところが変な風に黒いにゃよ。そうでなければ不細工って言われないですむのに。
まあ、お母さんがにゃんと思おうが、ご主人が「姫ちゃん」って呼んでくれているからいいんにゃけどね。
でも、お母さんは頭でっかちのすかたんだとあたちは思うんにゃ。

ちび猫日記2

にゃん。兄姫(えひめ)にゃ。
本当は兄橘姫(えたちばなひめ)って言うんにゃ。
でも、長くて呼びにくいから、「えひめ」って呼ばれることになったんなゃ。
あたち、最初は兄弟四人で拾われたにゃ。
そのうちの二人がこのうちに来て、二人とも偶然女の子だったから、妹を弟橘姫(おとたちばなひめ)ってつけて「おとひめ」って呼んでいたんにゃよ。
お母さんが名付けたんにゃけど、このところのお母さんは何故か、古典に凝っているみたいで、今回のあたち達の名前は、倭武尊(やまとたけるのみこと)の二人の奥さんの名前なんにゃって。
古事記の世界にゃ。
以前、おうちにいたコは月夜麿(つきよのまろ)と木乃花咲耶子姫(このはなさくやこひめ)、輝夜(かぐや)にゃんて、思いっきりジャパネスクにゃ。
「だって、どう見ても兄姫は平安時代のお姫様の生まれ変わりに見えるんだもん。」ってお母さんは笑うんにゃ。
ママにゃんは「まあ、見えないこともないか。」にゃって。
あ、お母さんはママにゃんの母親で、ママにゃんはあたち達をミルクから育ててくれた人のことにゃ。
あたちはママにゃんが大好きで、おっぱいの上で寝るのがもっと好きにゃ。
でも、そうやってママにゃんに甘えていると、先輩猫の朔太郎が(あたちは黒おじちゃんって呼んでいるんにゃ。)すごい顔で睨みつけるにゃよ。
どーしてかにゃあ?
あたち、何か悪いこと、した?