にゃん。兄姫(えひめ)にゃ。
ねえ、聞いて、聞いて。
あたち、頑張ったの。
お父さんのビールの入った段ボール箱の陰で、息を潜めて待っていたの。
このところ天井裏を我が物顔で走り回るあいつ。
そう、ねずみ。
夜になって台所仕事が終わると、下に降りてくる、って知っていたの。
だから、真っ暗な台所の隅で、ひたすら待ち構えてやったの。
そうしたら案の定、あいつは現れたの。
あたちは猛ダッシュで飛びつき、一撃で捕獲。
意外と簡単だったにゃ。
しばし弄んでやってから、おもむろにご主人の元へ。
ご主人の前に行くとご主人たら変に裏返った声で「えらい、えらい。」って褒めてくれたにゃ。
あたちは得意絶頂で、お母さんにも見せびらかしたにゃよ。
そのあと、まだ生きていたあいつを、ご主人が始末しようとしたんにゃけど、ご主人たら腰が引けておっかなびっくり。
まごまごしているところであいつは隙を見つけたらしく逃走。
あたちはすぐさま追いかけたんにゃけど、冷蔵庫の下に潜り込まれて結局あいつに脱走されちゃったにゃ。
もう、ご主人たら何をやっていることやら。
せっかく捕ったねずなのに、まんまと逃げられるにゃんて。
さすがにご主人も残念だったのか、「ねずは苦手なんだよ~。お父さんがいたら良かったんだけど。」だって。
そうなの。お父さんはお仕事で留守だったの。
そしてご主人は半分安心のため息。
でも、あたちは諦めきれずにしばし待機。
だけどあいつも命がけ。もう広い所まで出て来ない。
結局、あたちのハンティングはご主人のせいで不成功に終わったみたい。
まあ、ご主人が良いならそれでも良いかにゃ。
ねずの完全捕獲はまたの機会でもあたちはかまわにゃいし。
そうしたらまた褒めてもらえるし。
でも何でご主人はねずが苦手にゃんだろうにゃあ。あんな面白いおもちゃは滅多にないのにね。
また捕まえよおっと。