黒猫日記97

にゃ。朔太郎にゃ。
お父さんが夜仕事の時には、お母さんはお夜食を作って大皿に乗っけておくのにゃ。
お父さんがお腹を空かせて帰ってくるから、簡単に食べられるように、ってわざわざワンプレートにしておくんにゃって。
小さめのおにぎりさんとおかずのセットにゃんだ。
いつも思うんだけど、どうしてお父さんのお夜食は、僕の大好物ばかりで美味しそうにゃんだろう。
お母さんが台所に立っている時点でそれは、とっても美味しそうなにおい…。
鶏の唐揚げでしょ、ウィンナーでしょ、肉団子でしょ、それに今日はおにぎりさんじゃなくて五目おいなりさん。
にゃあ。涎が出てきちゃう。
ついつい伸び上がってテーブルの上を覗いて見ていたら、ご主人に首根っこを捕まれて怒られてしまったにゃ。
いーにゃん。見ているだけにゃんだから。
って膨れていたら、お母さんがウィンナーを一つくれたにゃ。ラッキー。
でも、このウィンナーったら、僕に食べられたくにゃいのかな、ころころってよく転がって逃げまくるのにゃ。
追っかけて捕まえてまた逃げられて、にゃんて遊びながら美味しくいただきましたにゃ。
そのうちに夜中になって、お母さんもご主人も寝ちゃって、僕は一人でテーブルと睨めっこ。
でも、寝る前にご主人に「つまみ食いしたら許さないよ!」って釘を刺された手前、お皿に手を出したら明日が怖い…。
仕方にゃいから、お父さんが戻ったら分けて貰おう、と思い決めて、僕もご主人の足下でしばし睡眠。
お父さんは思ったより遅いお帰りで、朝の四時だったにゃ。
いち早く僕がお迎えに出ると、お父さんは喜んで頭を撫でてくれたにゃ。
そんなことより何かちょーだい、ってお父さんに訴えても、お父さんには解らないんにゃ。
それに、時間が時間にゃものにゃから、お父さんもかなりのおねむ。
それでも大好きなビールは欠かせないのか、くーっと一本空けると、ほとんど手つかずのお皿にラップしてさっさとお布団へ。
僕は肩すかしを食らった格好で取り残されたにゃ。
かといって、勝手にお皿のものを食べるとご主人に怒られる…。
僕は、すごすごとまたご主人のお布団に向かったのにゃ。
朝、一番に起きたお母さんに、かりかりを貰ったけど、お腹がいっぱいになっても僕の気持ちはお父さんの食べ残しに向いたままだったのにゃ。
一遍狙いを付けたものは食べないと気が済まない僕なのにゃ。
そのうちにご主人が起きてきて、僕がつまみ食いをする隙が、ますますなくなっていく…。
にゃあ。でも諦めるもんか。
じいっと我慢して好機を狙っていたら、お母さんは病院へ、ご主人はお洗濯へ。
やったー!僕はテーブルに飛び乗って、ラップに爪を立てて破ると、美味しそうなおいなりさんの皮をカプリ。
にゃあ。やっぱり甘くて美味しい!中身に目もくれず皮だけを一枚全部食べ終えた時…。
「こら!さくにゃあ!」
声と一緒にスリッパも降ってきたにゃ。
「あーあ。やられた。」ご主人の呟きを尻目に僕は一目散に逃げ出す。
美味しくてスリリングなひとときでした。にゃんにゃん。