黒猫日記84

にゃ。朔太郎にゃ。
お母さんたら、はりきって帰って来たと思ったら、僕の前に買い物袋を置いてにこにこ。
「さくにゃあ、さくにゃあの大好きなかりかりがとっても安かったから、いっぱい買って来ちゃった。」にゃって。
にゃ。確かにシーバデュオは僕の大好物にゃよ。
でも、それを五箱も目の前に積まれた僕としてはたじろぐしかないじゃにゃい?
お母さんは得意げににこにこ。
僕は、どうせすぐには貰えないお預け気分に、うんざり。
あの、ね。朝ご飯と晩ご飯を貰う時にも、しっかり「お手、お代わり、両手。」ってさせる癖に、何もなしでおいしい物をくれる訳がない、ってことぐらい、僕にだって分かるんにゃよ。
ふにゃあ。用心深く疑いの眼差しでお母さんの出方を見守っていると、やっぱりさっさと袋をかたずけて、「さくにゃあ、今度はお返事できるようになろうね。」にゃって。
それから朝晩、僕は、ご飯を貰うために「お返事」まで強要されるようになったのにゃ。
「だいたい、うちのこになった猫は、芸をしなければいけない。」って言い切ったのはお父さんにゃんだけど、芸を仕込むのはお母さんの役目らしいんにゃ。
にゃものにゃから、僕はおうちに貰われてきてすぐに、「お手」の訓練をさせられたんにゃよ。
先輩猫のれおん君は、「お返事」も「尻尾ぱたぱた」も「お手、お代わり、両手」も「お出迎え」も出来たんにゃって。
同じ猫なら出来ない訳はない、っていうのが、このうちの人達の意見で、僕の意見や素質なんか完全に無視してくれちゃっているんにゃよ。
とはいえ、僕としては今は亡き先輩猫とはいっても、他の猫と比べられて面白い訳ないじゃにゃい?
にゃから僕は、お母さんの「さくにゃあ、お返事は?」の声を完全無視。
そのために少々ご飯を貰うのが遅れようとじっと我慢。
お母さんは僕の頑固さにあきれ顔。
にゃあ。僕にだって譲れないことはあるんにゃよ。
にゃんだか、お母さんに反抗期な僕なのでした。