ふにぃ。朔太郎にゃ。
僕の大好物の一つが卵焼きにゃんだ。これは前にも話したよね。猫のくせに卵焼きが好きだなんて、ってご主人は眉をひそめるんにゃけど、好きな物はしようがにゃいよね?そういうご主人も大好きなんだから人のこと、いや、猫のことを言えにゃいと思うんにゃ。でもこのおうちの家族は全員、卵焼きが好きにゃよ。甘いのやバターで焼いたオムレツ、挽き肉入りやウィンナー入り、ほうれん草入りや玉葱入り。いろんな卵焼きが日替わりで食卓に乗るんにゃ。だから僕は毎日、お父さんのお膝でおねだりして、卵焼きをもらっているんにゃよ。
そういうおうちにゃから、お余所でも卵焼きを買い込んでくるんにゃ。それでもお母さんとご主人が昨日買ってきたのは、京都のだし巻き卵にゃったんだって。
まあ、何処の名産にゃろうが、僕には全く関係のにゃいことで。美味しい物は僕にだってわかる、ってことにゃんだろうにゃあ。
忙しいご主人達は、出来立ての卵焼きのパックを紙袋に入れたまま台所に置いて、買い忘れた物を買いに出ちゃったにゃ。僕はご主人をお出迎えに出たけど、ご主人にスルーされてちょっとイジケたのにゃ。そしたら何処からともなく良い匂い。僕はそれが紙袋の中身だと気付いたにゃ。おうちの中には誰もいない。僕は紙袋に首を突っ込んで、良い匂いのするパックを引っ張り出したにゃ。
それは紙に包まれた薄いプラスチックのパックで、僕が爪と牙を使って引き出した時、その角っこが既に破れちゃっていたのにゃ。そしてそこからまた、たまらにゃく良い匂い。
僕は破れ目に牙をたてて引きずり、隠れ場所のテーブルの下に持って行ったにゃ。そしてひたすらはぐはぐ。
にゃー!美味!ちょっとこの入れ物のプラスチックが邪魔にゃけど、口の中でとろけるこの感じ。にゃあ、幸せ…。
にゃんて、ひたすらはぐはぐ食していたら、いきなりむんずと首の後ろを捕まれて引っ張り出されたにゃ。
びっくりして見上げると、そこには激怒の表情のご主人。
にゃー!にゃー!にゃー!
瞬間僕は、恐怖に凍り付いたにゃ。にゃって、ご主人の手にはラップが!
ふにゃ~。ご主人+ラップ=恐怖!
僕の頭の中にはそれがしっかりインプットされているにゃ。
僕はご主人の手から逃れようと必死でもがいたにゃ。でも、結局頭に一発食らってからしか逃げられなかったにゃ。にゃあ。
「食べ物の恨みは恐ろしい」が、どうやらおうちの合い言葉みたい。台所に出し放しにしておいたのが悪い、ってことで、僕は頭に一発で済んだんにゃって。お母さんにもしっかり睨まれた僕にゃのでした…。にゃんにゃん。美味しい物には気をつけるにゃ…。